ダイバース!」カテゴリーアーカイブ

『ダイバーズ!』 第二十二章 【クラス・ウィザード】 ④

長谷川が薄笑いを浮かべている。
「まじめに答えてくださいよ。戦闘中のことなんだから」
「全部が冗談ってわけじゃねぇ。隊長の光の矢は強力だが、それだけチャージに時間がかかる。当然だが、あんな大技を操り切るには相当な集中力も必要だ。あの呪文にはふたつの意味がある。一つ目は、パーティーに放射のタイミングを教えることだ。あの呪文の詠唱が終わるまで、後藤たちはチャージで無防備になった隊長を守り切ることに集中する。二つ目は、チャージへの集中だ。ただ単にチャージを待っているだけじゃ、周りの敵のせいで、集中力が乱れやすい。呪文を詠唱することで、気を集中し、回りにかき乱されないようにしているってことだ。だがな」  

立体スクリーンの中で長谷川が右手を開いた。
「隊長の光の矢は、増設した脳に移植したシステムを使って、タウンのエネルギーを変換して放射するテクニックだ。言ってみりゃ、自分自身を触媒として、外部の力を使うわけだ。魔法使いが、習得した技を使って、神や悪魔の力を放射する魔法と理屈は変わらん。だから魔法だと思もっときゃいいんだよ。見た目も魔法そのまんまだしな。あのレベルのダイバーは、傭兵の世界じゃ、クラス・ウイザードって呼ばれてる」
「ウィザード? そんなクラスがあるんですか」
「いや、正式なクラス名じゃねぇ。仮想空間での戦闘能力の正式なクラス分けはクラスAまでだ。おまえも後藤もクラスAだが、増設してる後藤と非増設のおまえの間には大きな差がある。隊長のレベルはさらに後藤の能力をはるかに超えている。今のクラス分けじゃ、クラスAの幅があり過ぎんだよ」
「近いうちにクラスAも再分類されるかもしれませんね」
「そりゃ、ねぇと思うぜ。幅を作る原因になってるのは、脳を増設したおれたちがいるせいだ。軍事目的での増設が国際条約で認められない以上、クラスAの再分類には、どこの国も手の出しようがねぇ。クラス・ウイザードは非公式にしかなりようがねぇってことだ」
「何人くらいいるんです、クラス・ウィザードは?」
 長谷川が頭を左右に振った。
「さぁな、わからねぇよ。定義されたクラスじゃねぇ単なる通称だし、非公式だからな。誰も正確な数は握ってねぇんじゃねぇか」
「クラス・ウィザードになると、光の矢が使えるんですか?」
「なんだ、おまえ、光の矢に興味があるのか? あんなもん、増設もしていないおまえにゃ、使えねぇよ」
「いや、使えるようになりたいだなんて思ってやしませんよ。単なる興味です」
「興味を持つなら、まず増設を考えるこったな。そうすりゃ、後藤の風当たりも少しは弱まるぞ。後藤や菊池が使っている光波タイプの武器も使えるようになるしな」

脳を増設した魔女。底知れない強靭さを感じさせる黒木冴子の黒い瞳が目に浮かんだ。