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『ダイバーズ!』 第二十五章 【暴力と血と】 ⑦

 一分足らずで決着はついた。壁に血のりが飛び散り、床には血だまりが広がっていた。

「後藤! 右手のロッカーの後ろにひとり隠れてるぞ!」

 後藤が弾倉の束を引き抜いて、新しい束の端を差し込むと、ずかずかとロッカーに向かって歩いて行った。ロッカーの後ろには、スエット姿の若い男がうずくまって震えていた。

「飯島はどこだ?」

 男は震えながら、首を振った。

「てめぇ、死ぬぞ」

「日本語、わからない。飯島、だれ? 知らない」

 後藤のマシンガンが轟音を上げた。男は目を開けたまま、血まみれになって倒れた。

「後藤さん、やり過ぎだ。無抵抗じゃないか」

「馬鹿野郎! こんな奴にでも、一発撃たれりゃ死ぬんだぞ。てめぇは中国人の怖さをしらねぇ。まして福建の奴らは、どんなど汚ねぇ手を使ってものし上がろうとする連中だ。見ろ、こいつを! 死にたくなかったら、妙な情を出すんじゃねぇ!」

 後藤が足で死体をひっくり返した。その手には拳銃が握られていた。

「おい、後藤。おまえの増設装置からの電波分析で厄介なものを見つけたぞ。二階にいる連中の一人に、複数のMCUを埋め込んでいる奴がいる。全身を改造していると見て間違いない。気をつけろ」

「わかった。そいつの位置は捕捉できるか?」

「あぁ、今見てる。二階の中央あたりでじっとしてやがる。おそらく、なにかに身を隠しているんだろう。二階に上がってきたところを待ち伏せする気だ」

 後藤は歩き出すと階段を見上げた。

「厄介だな。やたら狭い階段だ。このまま上がったんじゃ、狙い撃ちはまぬがれねぇ。長谷川さん、奴の視覚を殺せるか?」

「寺井がやってるが、すぐには難しそうだ。さっきの連中みたいな汎用増設装置を改造したもんじゃない。高度に暗号化されてるようだ」

「ふん、非常階段はどこにある」

「建物の外だ」

「菊池、外の状況はどうだ」

「いたって平和だ」

「楽してやがったな。隊長、どうする。ここから二階へ行くのはリスクが高すぎる」

「非常階段から突入するしかなさそうね。後藤、菊池たちと合流しろ。非常階段から突入する。沢田、おまえはダミーだ。そこにいて、合図をしたら、階段の上に向かって撃て。奴の気を引き付けるだけでいい」

 後藤がマシンガンを肩に背負って外へと飛び出していった。

 硝煙の匂いが立ち込める部屋にひとり取り残された。目を剥いた血まみれの死体。生臭い血の匂いに吐き気をもよおした。まだ生きてる奴がいるかもしれない。背筋に寒気が走った。拳銃を構えてあたりを見回した。沢田の膝が笑っていた。