『ダイバーズ!』 第十八章 【探り】 ①

 目を開くと、ダイビング・チューブの中だった。沢田は現実の世界に戻ってきた。顔と頭を覆っているヘッドマウンターが上にあがっていく。早くチューブの外の空気を吸いたかった。沢田の体を上から下へとなめていく緑の走査光の動きがもどかしかった。
 ロックが外れる重い音。透明な上部カバーが上がっていった。ひんやりとした空気が流れ込んでくる。いらだっていた気持ちがクールダウンしていった。沢田は目の前で、右手を開いて、閉じた。拳の中に温かみを感じた。現実であることを少しだけ確かめられた気がした。沢田は体を起こしてチューブから出ると、コックピットへ向かった。

 コックピットには、すでに全員が集まっていた。立体スクリーンを投影するテーブルを取り囲むようにして立っている。

 黒木冴子が振り向いた。

「沢田、ちゃんと戦場に立てたじゃない。良かったわね。おめでとう」

 戦場に立ったなどという言葉からは、ほど遠いものだった。

「えっ、いや、あれは……。僕は行って戻ってきただけです。何もしてません」

「最初はそんなものよ。ここにいる後藤や菊池、原田だって似たようなものだったわ」

 後藤が力のこもった目を黒木冴子に向けた。

「おれが経験した惨劇を、こいつのあんなちっぽけな話と一緒にして欲しくねぇな」

「ロマンティストね。自分の経験がこの世で一番の悲劇だなんて、まだ抜け切れてない証拠よ」

「隊長、あんた、おれにケンカを売りたいのか」

「そんな暇じゃないわ。早く抜け切ることね。いずれそれがおまえの弱点になるわよ。寺井、もう、状況を報告できる?」

後藤が、ふんっとばかりに鼻から息を吐いた。