『ダイバーズ!』 第二十五章 【暴力と血と】 ⑤

マシンガンを抱えた後藤が事務所の扉の前に立った。周りの壁はくすんで古ぼけていたが、扉だけは新しかった。木製だが、厚みがありそうだ。ダークブラウンの木目に、真鍮の取っ手が黄色く光っていた。扉の右上からは監視カメラが見下ろしている。マシンガンを持った後藤の姿がすでに捉えられているはずだ。もう後戻りはできない。今頃、あくびをしながら監視カメラを見ていた下っ端が、後藤の姿に椅子ごとひっくり返っていることだろう。事態は数秒で組員たちに伝えられるはずだ。武器を取らせる時間を与えるわけにはいかない。

 後藤が取っ手をつかんで引くと扉が少し開いた。鍵はかかっていない。

「いくぜ」

 後藤が事務所の両開きドアを勢いよく開いた。沢田は慌てて、マグナムを部屋の中に向かって構えた。酒場を連想させるソファーとカウンター席の部屋。部屋にいた二十人くらいの男たちが、一斉に沢田の方に顔を向けた。人相が悪い。巨大なマシンガンを脇で構えた後藤が中を見回した。

「飯島に会いにきた。奴はどこにいる」

「なんだぁ、おまえはぁ」

 二、三人が腰から拳銃を引き抜いて、近寄ってきた。

「長谷川さん、見えてるか?」

「あぁ、おまえの目を通して良く見えてるぞ。おまえがいる一階は全部で二十四人いるな。飯島の顔はない。おそらく、奴は二階だろう。気になることがある。そのままで、十五秒ほど時間を稼いでくれないか。今、解析中だ」

「あぁ、簡単な話だ!」

 後藤はマシンガンを構えると、部屋の中をところ構わず乱射し始めた。爆音がとどろき、ガラスが飛び散った。テーブルが床の上を這いずり回る。柱の後ろに飛び込む者、ソファーの後ろに駆け込む者、突然の乱射に全員が逃げ惑った。

「おまえら、良く聞け! 一分だけ待ってやる。飯島を呼んで来い。呼んでこねぇと、今度は本気で撃つぞ」

 後藤が怒鳴った。返事をする者はいない。

「後藤、わかったぞ。こいつらとんでもねぇ連中だ。全員が脳を増設してる。通信系と反射速度をブーストしてやがる。単なるヤクザじゃねぇ。しかも顔の骨格パターンから見て、全員が中国人だ」