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『ダイバーズ!』 第二十五章 【暴力と血と】 ⑥

「中国人か。増設までやるってのは、お高い上海や北京の連中じゃねぇな。気の荒い福建の連中だ。いずれにしても不法滞在者ってことは、遠慮はいらねぇな」

 後藤が白煙の上がる銃口を部屋の中央に向けて仁王立ちになった。

「後藤、気をつけろ。奴ら、増設した脳で通信を始めやがった。一気に攻撃してくる気だ。今、寺井が奴らの増設装置に侵入を仕掛けてる。侵入するまで待て」

 部屋の中で、ソファーの間を拳銃が飛び交った。全員に銃を回している。

「一分だ。どうやら連中は言うことを聞く気はないらしい。長谷川さん、奴らが飛び出してきたら、視覚を奪ってくれ。一気に片づける」

 後藤に躊躇は感じられない。今度は本当に殺す気だ。

「隊長、後藤さんは奴らを殺す気です。殺人ですよ」

「この状況でこのまま生きて帰れると思うの? 正当防衛よ」

「そんなことが通用するはずありません。立派な殺人です。メディアだって黙ってませんよ」

「あとは、局長の仕事よ。おまえは、自分の仕事に専念しろ」

「僕に殺人はできません」

「おまえは後藤の援護。しっかり後藤を守るのよ。命令違反は許さないわ」

「沢田、うるせぇぞ。黙ってろ。長谷川さん、カウントダウンはまだか」

「もう少しだ」

「こんなのやり過ぎだ。僕たちは防衛省の職員なんですよ。警察じゃありません」

「侵入した。やつらがくるぞ。八、七、六・・・」

「こんなこと警察でもやりはしないわ」

 後藤が両手でマシンガンを構え直した。

「二、一、ゼロ」

 組員たちが一斉に、柱やカウンター、ソファーの陰から銃を構えて姿を現した。

「うぉぉ、見えねぇ!」

 組員たちが叫び声を上げて、両手で顔を覆った。後藤のマシンガンが轟音を上げた。男たちが体から血を吹き出し、次々に後ろに吹きんでいく。後藤のマシンガンが床にばら捲く薬きょうの金属音。沢田が構えた拳銃、引き金にかけた指が硬直していた。銃口を人に向けたことすらなかった。